江戸時代において大火と呼ばれる火事は10回を越えます。
その中でも1657(明暦3年)の江戸明暦の大火はすさまじく、江戸城の本丸が焼失し、市街の大部分も焼け失せて
しまう大惨事でした。
それでも江戸では木造の家を造り続けます。
耐火性を高めるために、外壁を漆喰で塗り固める方法をとったりもしますが、基本は木造でした。
なぜそれまで木にこだわったかというと、1つは「日本は地震大国である」ということが挙げられます。
火事のみならず地震だっていつ起こるかわからないのが江戸の街です。煉瓦や石で造られた建物は、地震で簡単に
倒壊し死傷者が増えるのは確実です。
しかも崩壊した煉瓦や石は後片付けも大変で、復興に多くの時間をとられてしまうのです。
もう1つが気候です。日本の住宅は夏の蒸し暑さを防ぐことに重点をおいて建てられています。
特に江戸は夏は蒸し暑く、冬は突風が吹き乾燥しています。
このような環境では石造りで窓の少ない家などに住むのは大変つらいものであったろうと思われます。
また、火事があれば家の建て直しのために職人の仕事が増えました。
江戸の人たちが無策であったわけではなく、木の家にこだわったのはそれなりの確固たる理由があったのです。